Slackbot を虫眼鏡で覗いている画像

Slackbot 再構築の舞台裏

親しみやすい Slack のボットが、通知ツールから高度な AI エージェントへと進化を遂げました。その舞台裏とは

執筆者 : Rob Seaman, EVP & General Manager at Slack2026年2月6日

Slackbot には、初代が誕生した当初から Slack の DNA が息づいています。この親しみやすいボットは、長年にわたり、通知ツールとしてプラットフォームの基本事項を案内するガイド役を務めてきました(できることこそ限られてはいましたが)。そして、人びとの働き方が変化するなか、ボットが担う役割についての私たちのビジョンも進化していきました。

私たちは今月、Slack におけるパーソナル AI エージェントへと進化した、まったく新しい Slackbot を発表しました。これは、基本的な通知ツールから、仕事の流れの中に組み込まれた高度なエージェントへの転換を意味します。インストールや学習、管理は不要で、すぐに利用を始められます。

Salesforce の社内全体で、4 万 2,000 人以上の従業員がすでに Slackbot を利用して、週に合計 13 万 8,000 時間を節約しています。これは 640 万ドルの生産性向上に相当します。とくに積極的に活用している営業担当者は、1 人あたり週に最大 20 時間もの時間を節約しています。ユーザー満足度は Salesforce 史上最高の 96% に達しており、コンテキストを理解する AI が大規模な組織でも効果的であることを証明しています。

私たちは、Slack をより強力にするだけでなく、ユーザーの皆さまが Slack を好きになるきっかけとなった、シンプルさ、思いやり、そして魔法のような驚きも実現したいと考えました。そして、最新の AI と Slack の個性を組み合わせることで、仕事がこれまで以上にインテリジェントになると同時に、仕事が再び楽しくなるようなツールを設計しました。

コミュニティとともに構築

新しい Slackbot の開発は、トップダウンの指示で始まったわけではありません。きっかけは週末のサイドプロジェクトでした。それが瞬く間に、無視できないほどの勢いを持つようになったのです。

開発の指針となったのは、Slack のプロダクトの中核をなす原則の 1 つで、私たちが「道筋のプロトタイピング」と呼んでいるものでした。具体的には、完璧なツールになるよう机上で何か月も計画を練るのではなく、まだ開発途中の初期の段階で、自分たちの仕事の流れの中で実際に使ってみました。大事にしたのは「完璧さ」ではなく、いかに「また使いたい」と思ってもらえるかです。こうして、いち早くリリースし、意見や感想に耳を傾け、推測ではなく実際の使用感をもとに試行錯誤を繰り返しました。

初期のアイデアを実際に試してもらい、何が起こるかを観察することは、とても重要だと学びました。社内のチームやパイロット版を利用したユーザー企業からは、Slackbot がうまく機能した点とそうでない点、機能をどのように見つけたか、使い続けるための決め手となったのは何かなど、さまざまなことを教えてもらいました。このように私たちは、AI が真に役立ち、直感的であると感じられる瞬間を追究したのです。

これはチーム一丸となった取り組みでした。Slackbot の機能を募るチャンネルを立ち上げたところ、すぐに Salesforce 全体から数千ものメンバーが参加しました。このコミュニティは究極のテストの場となり、得られたリアルタイムのフィードバックのおかげで、エンジニアは数か月ではなく数日単位で改善を繰り返すことができました。そして、Salesforce の全従業員向けに Slackbot が社内リリースされると、数万人の同僚から日々の仕事で利用したうえでの意見や感想が集まりました。その後、Slack AI を利用しているいくつかのユーザー企業にもパイロット版を提供し、いただいたフィードバックをもとに改良を続けました。このツールはユーザーのために構築したものですが、より重要なのは、ユーザーと「一緒に」作り上げたということなのです。

技術的な秘密はコンテキストにあり

機能の実現にあたり、真のパーソナルアシスタントに求められる高度な推論能力を備えた、Anthropic の最先端モデルである Claude を採用しました。しかし、Slackbot の本当の魔法は、そのコンテキストエンジニアリングにあります。

AI を仕事に役立てるには、適切なタイミングで適切なデータを提供する必要があります。自社の業務データが蓄積されている Slack ほど、従業員向けのエージェントを導入するのに適した場所はないでしょう。さらに重要なのは、コンテキストが進化し続ける点です。更新され続ける情報を常に把握することで、Slackbot はあなたを知り、あなたが誰と一緒に働き、どのプロジェクトに関わり、誰とやり取りし、Slack 内のどこに注目しているかを理解します。こうして、個々のユーザーに寄り添うパーソナルエージェントが実現します。

私たちはコンテキストを重視し、Slackbot を既存の検索インフラストラクチャと深く連携させました。きわめて堅牢な Slack の検索テクノロジーをもとに、Slackbot は人間にはできない速度でワークスペース全体の情報を検索し統合します。

Slack のネイティブコンポーネントである Slackbot には、Slack 全体の状況を認識する力があります。つまり、会話、canvas、リストの背景情報はもちろん、ユーザーがどのように同僚とやり取りしているかも理解できます。こうして、別途管理が必要なアプリとしてではなく、仕事の流れの中に自然に溶け込むレイヤーとして機能するのです。

人間のように「考える」

プロジェクトの開始当初、Slackbot はおもにベーシックな自然言語検索で動作していました。最初の一歩としてはそれでよかったのですが、現代の複雑な仕事に対応するには十分とは言えません。より精度を高めるために、私たちは以下のような要素を組み入れる必要があると考えました。

  • 高度なフィルタリング : Slack の検索バーにあるような、特定の日付範囲や「from」などのパラメーターに対応した高度なフィルターを Slackbot でも利用できるようにしました。これにより、関連性の高い情報だけをコンテキストウィンドウに抽出できます。
  • 並列・反復検索 : これが技術面での最大のブレイクスルーでした。一度の検索で終わるのではなく、Slackbot は関連する複数のクエリを同時に試行できるようになりました。すぐに答えが見つからない場合は、人間の調査者が行うのと同じように、前の結果をもとにさらに深く掘り下げます。
  • ガイドつきのインテリジェンス : 私たちは、単なる案内役以上の存在になるよう Slackbot を設計しました。親しみやすく、何でも知っていて、いつでもそばにいる同僚のような存在を目指したのです。たとえユーザーが AI の扱いに慣れていなくて、プロンプトが不十分だったとしても、Slackbot は匙を投げることはありません。代替案やフォローアップの質問を提案して、求める情報が得られるようユーザーを導きます。

Slackbot の重要な特徴のひとつは、プロセスを可視化し、情報源へのリンクを示す点です。Slackbot は推論(そのチャンネルを検索する理由、不明点の明示、回答にたどり着いたプロセスの説明など)を共有することで、ブラックボックスではなく、ユーザーとともに思考するパートナーになります。

この透明性により、Slackbot の出力への信頼が高まり、仕事上のやり取りで求められる明確なコミュニケーションを体現できます。Slackbot は「思考のプロセスをオープンにする」ことで、単に情報を提示するだけでなく、その情報をどのように得たのかをユーザーに伝えます。これは、ともに批判的思考を行うようにユーザーを促すことにもなります。

インテリジェントで役に立つ、楽しい Slackbot へ

もちろん、目指したのは効率化だけではありません。Slackbot を「Slack らしさ」を感じられるものにしたいと私たちは考えました。そこでシステムプロンプトについて何度も試行錯誤し、インテリジェントで役に立つだけでなく、親しみやすくて、遊び心もあるという、ブランドの価値観に沿ったものになるよう工夫を重ねました。

その結果、Slackbot は、ユーザーとツールとの間に真のつながりを生みだす、以下のようなワクワクする特徴を備えるようになりました。

  • 親しさを反映する : 検索ランキングにおいて、ほかのメンバーやチャンネルとの関係の度合いを考慮します。つまり、そのユーザーにとってどの会話が重要かを把握し、一人ひとりに合わせて調整した結果を提示します。
  • トーンを合わせる : Slackbot はあなたのトーンを自然に読み取ります。ビジネスらしいスタイルならプロフェッショナルに対応し、冗談を言うタイプならユーモアで返すよう設計されています。
  • 楽しんでもらう : そのユーザーがよく使う絵文字を使ったり、トップバーに目がハートの絵文字を登場させたりなど、初期の Slack のような遊び心を取り入れたいと考えました。

たとえば「私を動物に例えたら何?」と Slackbot に話しかけた時に、最近のあなたの仕事をもとにぴったりの答えを返してくれたなら、ただ業務を処理するチャットボットではなく、チームメイトのように感じられるでしょう。こうした Slack ならではの感情的なつながりにより、ユーザーは支えられていると感じながら、よりスマートに仕事を進められます。

信頼とセキュリティ

Slackbot は Slack 本体と同じ信頼の基盤の上に構築されています。また、データを安全に保つための多層的なフレームワークである Slack AI ガードレールによって保護されています。ロールや権限、アクセスコントロールを尊重し、そのユーザーに閲覧権限がある情報のみを表示します。情報の引用元も明示されます。

Slackbot とのやり取りは、そのユーザー本人にだけ表示されます。データは保護され、Slack のセキュリティおよびコンプライアンスの基準に従って取り扱われます。リアルタイムの防御策により、プロンプトインジェクションや安全でないコンテンツ、フィッシングの企てといった問題を検出し危機を緩和します。また、厳格な権限チェックにより、Slackbot がアクセスできるのは、そのユーザーが Slack 内ですでに閲覧を許可されているデータのみに制限されます。

このようにして、個人の会話エクスペリエンスにおいても、企業に求められるエンタープライズグレードの信頼とセキュリティを実現しています。

新しいメンタルモデルへ

Slackbot がもたらす働き方の変化は、個々の機能だけで語れるものではありません。人びとの日々の仕事へのアプローチそのものが変わるからです。これまで働く人の多くは、ファイルを探し回ったり、会議での発言を思い出そうとしたり、休暇後のキャッチアップに四苦八苦したり、といった「仕事のための仕事」に多くの時間を費やしてきました。それらすべてを Slackbot がさっと片づけてくれることで、働く人の生産性は何倍にも高まるでしょう。

Slackbot は、働く人が現状を把握し、次のアクションを決定し、仕事を前に進めるための場所になります。真の変化は、ただ作業を肩代わりしてもらえるだけでなく、大規模な組織において、理解、意思決定、アクションの間で生じる摩擦を減らせることです。これにより、複雑な仕事もシンプルに感じられるようになるはずです。

この先 Slackbot は、さらなる高速化と高機能化が進み、Slack プラットフォーム内で従業員やエージェントと連携する力が高まって、人間に代わってより多くのアクションを実行できるようになるでしょう。そして、Slack に対応した AI ツールのエコシステムが拡大するなか、Slackbot が企業によるエージェント活用の玄関口になっていきます。つまり、Agentforce や Anthropic、Linear、OpenAI、Writer といった各種サードパーティーエージェントを駆使して仕事をするために最初にアクセスする場所になるのです。

働く場所が、ふたたび直感的で効率的、そして何より楽しい場所になること。それを目指して私たちは Slackbot を開発しました。この新しいチームメイトを皆さまに迎えていただけることを、心より楽しみにしています。

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    うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。